【断熱設計補助ツール】省エネ法仕様基準・告示266号判定シミュレーター(一戸建て住宅版)

省エネ法告示266号の基準に従い、断熱計画を瞬時にスタディできる設計者向けシミュレーターです。
地域区分と構造を選択し、断熱材の種類や厚みを調整しながら各部位の適合判定をリアルタイムでシミュレートできます。

断熱設計の補助ツールとしてぜひご利用ください。

省エネ法仕様基準 告示266号対応 R値(熱抵抗)による断熱設計シミュレーター

省エネ仕様基準 R値簡易判定シミュレーター(木造専用)

【ご利用上の注意と免責事項】
本シミュレーターは一戸建ての住宅専用の設計初期の簡易スタディ用ツールです。計算結果の正確性を保証するものではなく、利用により発生したいかなる損害についても責任を負いません。正式な適合判定や確認申請には、必ず公式の計算方法または専用ソフトをご利用ください。

【シミュレーターの使い方と適合化へのテクニック】
本シミュレーターの詳しい使い方と、計画建物を適合に持っていくための緩和措置やテクニックなどは、この記事の本文に詳しく解説しておりますので、是非最後までご覧ください。

【U値(熱貫流率)判定対応 エクセルツールの紹介】
省エネ法告示266号のU値(熱貫流率)仕様基準に対応した完全版のエクセルツール(有償版)を近々公開予定です。
R値判定・U値判定の双方に対応し、部材、面材の熱伝導率を手入力可能なため、あらゆる建材を入力可能です。

完全版は開口部で選択できる仕様が、窓が50種類以上、ドアが100種類以上、さらに手入力も可能となっています。

目次

「触りながら考える」設計初期のスタディ専用シミュレーター

このシミュレーターは、省エネ法告示266号の仕様基準の中でも、簡易的な評価基準であるR値(熱抵抗)により合否の判定を行うシミュレーターです。(画像の赤線部分)

木造(軸組充填断熱、枠組充填断熱、外張り断熱)、鉄骨造(外張り断熱、充填断熱)、 RC造(内断熱、外断熱、両面断熱)と、告示266号の構造、断熱工法区分に厳密に対応しています。

本シュミレーターは以下のような使い方を想定していますので、断熱設計の補助ツールとして是非ご利用ください。

  • ブラウザ上でリアルタイム判定:
    地域区分や構造、断熱材の厚み・種類を変更するだけで、設計R値と要求基準R値が瞬時に計算され、適合・不適合が判定されます。
    開口部の熱貫流率、日射遮蔽対策の日射取得率にも対応しています。
  • 「図面と対話する」ような感覚:
    「この厚みだとNGだから、ワンランク上の断熱材に変えよう」「ここはグラスウールからボード系に変えた方が厚みを抑えられる」といった試行錯誤を、手を止めることなくノンストレスで行えます。
  • 設計初期の機動力に特化:
    まずは手元でスピーディーに断熱計画を組み上げるためのスタディツールとしてご活用いただけます。
    より詳細な仕様基準であるU値(熱貫流率)による判定や、図面に仕様書として添付可能な完全版エクセルツール(有償版)は近々公開予定です。

本シミュレーターの入力マニュアルと断熱設計の重要ポイント

本ツールは、主要な建築構造(木造・鉄骨造・RC造)に合わせて、直感的にスタディできるよう設計されています。
本シミュレーターの入力マニュアルと、断熱設計を行う際に重視するべきポイントを解説いたします。

地域区分と断熱工法の選択

判定の根底となる要求熱抵抗基準値は、告示266号によって地域区分と構造、断熱工法により定められます。

シミュレーターは構造別にタブで切り替えて使用します。

地域区分と断熱工法を選択すると、告示に示された要求基準熱抵抗値が設定されます。

地域8などの多くの部位や、外張り断熱工法の床(その他の部分)、地域1〜4の日射遮蔽対策など、告示に判定基準がない項目は判定蘭に「対象外」と表示されます。

各部位の断熱材の選択と厚みの入力

計算に使う断熱材の熱伝導率は、主に(社)日本サステナブル建築協会(JSBC)の「木造一戸建て住宅の外皮計算基本講習テキスト」付録3に記載されている数値や、JIS A9511・JIS A9521・JIS A9526などに記載されている数値を採用しています。
これらは実際に適合性判定で使用できる公式の数値です。

ブラウザ版では、選択肢にない断熱材の熱伝導率を入力するための手入力機能はありません。
完全版のエクセルツールをご利用ください。

断熱材の熱伝導率についてのその他の根拠
国立研究開発法人建築研究所 平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)現行版 エネルギー消費性能の算定方法 第三章第三節

各部位の図解

告示266号の断熱構造とするべき部位説明図
「住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024」より抜粋

各部位が具体的にどの項目に該当するかは、各部位の説明図を参照ください。

該当する部位が存在しない場合は「評価しない」を選択します。例えば以下のようなケースが該当します。

  • 天井断熱を採用し屋根断熱がない場合の「屋根」や、屋根断熱を採用した場合の「天井」
  • 2F以上にオーバーハング床がない場合の「床(外気に接する部分)」
  • 基礎断熱を採用した場合の「床(その他の部分)」や床断熱を採用した場合の「基礎壁」など

熱抵抗の計算式と判定の条件

熱抵抗の算出式

$$R = \frac{d}{1000 \cdot \lambda}$$

  • R:熱抵抗値 [㎡・K/W]
  • d:断熱材の厚み [mm]
  • λ: 断熱材の熱伝導率 [W/(m・K)]

一般部位の判定式

屋根・天井、壁、床、基礎壁、RC造の断熱補強の判定式は以下の通りです。

熱抵抗の適合条件:設計R値 ≧ 要求基準R値 

開口部の判定式

開口部の断熱、日射遮蔽対策の判定式は以下の通りです。
開口部の熱貫流率は四捨五入して小数点第1位で判定することが可能です。

開口部(窓、ドア)熱貫流率の適合条件:設計U値 ≦ 要求基準熱貫流率
日射遮蔽対策のガラスの日射取得率の適合条件:設計η値 ≦ 要求基準η値

断熱構造としなくとも良い部位について

告示266号には断熱構造としなくて良い部分として以下の項目が示されています。
国交省の公式資料である「住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024」にて、わかりやすく図解されています。

告示266号の断熱構造としなくとも良い部位
「住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024」より抜粋

断熱構造としなくとも良い部位

  • 居室に面する部位が断熱構造となっている物置、車庫又はこれらと同様の空間の居室に面する部位以外の部位
  • 外気に通じる床裏、小屋裏又は天井裏に接する外壁
  • 断熱構造となっている外壁から突き出した軒、袖壁又はベランダ
  • 玄関、勝手口その他これらに類する部分における土間床部分
  • 断熱措置がとられている浴室下部における土間床部分
  • 600mm角程度の床下点検口など

国交省の公式資料である「住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024」には、基礎壁に関して断熱構造としなくても良い部分についての記述があります。
玄関・勝手口の土間床については告示266号に記述がありますが、この図によれば四周の基礎壁についても断熱構造とする必要がありません。

国交省「住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024」より抜粋

床(外気に接する部分)の床(その他の部分)への振替えについて

告示266号には以下の記述があります。

国土交通省告示第266号 1項2号のロ(イ)【断熱材の熱抵抗の基準値表】備考欄 6項目目に記載
表において、床の外気に接する部分のうち単位住戸の床面積の合計に0.05を乗じた面積以下の部分については、その他の部分とみなすことができる。

床(外気に接する床): オーバーハング床は、床面積の5%分を、床(その他の部分): 床裏に接する1Fの床に振り返ることが可能です。
これは緩和措置であり、玄関ポーチの上部の床など部分的に生じた2Fの「床(外気に接する部分)」は、この緩和措置を利用して、より条件のゆるい「床(その他の部分)」に振り替えて判定することが可能です。

開口部の熱貫流率の判定について

開口部(窓、ドア)は熱貫流率により判定します。
窓、ドア共に、主要な10種類程度の仕様の中から選択してください。

完全版のエクセルツールでは、窓は50種類以上、ドアは100種類以上の仕様の中から選択することができ、メーカーの商品など固有の熱貫流率を手入力できる機能を備えています。

仕様基準では、設計している建物の中で、最も条件の不利な開口部によって判定を行いますが、告示には以下の除外規定があります。
この除外規定をうまく利用しましょう。

  • 【小開口部の2%除外規定】
    • 住戸の外皮のうち、延床面積の2%以下となる小開口部(デザイン小窓や階段室の高所用小窓など)は、断熱仕様基準の判定対象から除外(適合扱い)できます。

開口部の熱貫流率と次項目の日射取得率については以下の数値を参照しています。(どちらも同じ数値です)
・一般社団法人 日本サッシ協会 わかりやすいサッシ・ドアの性能 住宅・建築物の省エネルギー基準の概要 BASIS版
・国立研究開発法人建築研究所 平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)現行版 エネルギー消費性能の算定方法 第三章第三節・第四節


開口部の日射遮蔽対策の判定について

地域1〜4については、告示266号には判定基準がありません。
ツールでは自動的に「対象外」と判定されます。

地域5〜8については以下のいずれかの条件を満たせば適合となります。

  • 軒・ひさしがある場合
  • 開口部に付属部材(外付けブラインド、障子)がある場合
  • ガラスの日射取得率が地域ごとに定められた数値以下の場合
  • 開口部の日射取得率が地域ごとに定められた数値以下の場合

①、②の場合は無条件で適合となります。

③の場合はガラス本体の仕様、④の場合は建具枠の仕様と建具内のガラスの仕様によって日射取得率が定められていて、双方ともに10種類のガラスの仕様を選択して適合・不適合を判定します。

複数ある開口部のうち、仕様基準では最も条件の厳しい開口部について判定を行いますので、通常は④による判定を行うことになるかと思います。

【日射遮蔽対策の注意事項】

  • 「日射遮蔽対策」は、開口部の面積の大部分が透明材料であるものに限ります(不透明材料のドアは対象外です)。
  • 「付属部材」とは、紙障子、外付けブラインド(開口部の直近外側に設置され、金属製スラット等の可変により日射調整機能を有するブラインド)、その他これらと同等以上の日射遮蔽性能を有し、開口部に建築的に取り付けられるものをいいます。レースカーテン、内付けブラインド等の着脱が容易なものや、竣工引渡し時に設置可否の確認が困難な部材は対象外です。
  • 「ひさし、軒等」とは、オーバーハング型の日除けで、外壁からの出寸法がその下端から開口部下端までの高さの 0.3 倍以上のものをいいます。(参考図面参照)
省エネ法日射遮蔽対策の軒・ひさしの条件
日射遮蔽対策 軒・ひさしの条件

日射遮蔽対策においても告示266号において除外規定があります。

  • 【日射遮蔽対策の4%除外規定】
    • 天窓を除く開口部面積の合計が延床面積の4%以下である場合、または開口部が北面(北±22.5度)に設置されている場合は、日射遮蔽対策(ひさし・ブライド・日射遮蔽型ガラス等)の適用が免除されます。

木造・鉄骨造の外張り断熱工法について

外張り断熱工法においては、告示266号の中で床(その他の部分)つまり1Fの床断熱についての要求基準熱抵抗値がありません。
これは外張り断熱時には、多くの建物で基礎断熱が自動的に選ばれることになるのが理由です。

本シミュレーターにおいても木造・鉄骨造の外張り断熱工法を選択すると、床(その他の部分)の項目は自動的に「対象外」となります。

鉄骨造の充填断熱工法の特殊な判定基準について

鉄骨ALC建物など、鉄骨造で充填断熱工法を採用している建物の場合、外壁のALCなどでもある程度の断熱効果が見込めます。
そのような建物は、外装材の熱抵抗値の区分によって、建物内部の壁の充填断熱に要求される熱抵抗の基準値が部位別に細かく定められています。

鉄骨造のシミュレーターで地域区分、鉄骨造(充填断熱)を選択したら、計画している外装材の熱抵抗値を調べて以下の3つのカテゴリーから該当する区分を選択してください。
以下に各外装材のおよその区分を示します。

熱抵抗値0.56以上の外装材
  • ALC 100mm以上
  • サンドイッチパネル(金属断熱パネル)40〜50mmなど
熱抵抗値 0.15 以上 0.56 未満の外装材
  • ALC 50mm
  • 金属サイディング(断熱材一体型)15mmなど
熱抵抗値 0.15 未満の外装材
  • 押出成形セメント板(ECP)60mm
  • 窯業サイディング 16mmなど
  • ガルバリウム鋼板(角波・折板など単体)0.5mmなど

鉄骨造の「一般部の断熱層を貫通する金属部材の有無」とは?

鉄骨造の充填断熱の壁には告示266号によって断熱材を施工する箇所が細かく区分されており、それぞれの箇所について個別に要求基準熱抵抗値が設定されています。

この「断熱材を施工する箇所」は告示の記述では以下のように分別されており、さらに「一般部の断熱層を貫通する金属部材の有無」によって合計4つに分類されています。

断熱材を施工する箇所の区分一般部の断熱層を貫通する金属部材の有無
鉄骨柱、鉄骨梁部分–
一般部なし (A部)
あり (B部)
金属部材あり (C部)

鉄骨柱、鉄骨梁部分は特に問題なく理解できるかと思います。

この表でわかりにくいのは「断熱材を施工する箇所の区分」が一般部と金属部材とに分かれていること、さらに「一般部の断熱層を貫通する金属部材の有無」であり・なしと、同じ内容が2回問われているように思える記述となっていて、なにがどう違うのかと混乱してしまうところです。

この金属部材とは、内装の面材を止め付けるLGS下地のことを指しています。
図面で考えれば簡単に理解できます。

A部:一般部かつ断熱層を貫通する金属部材なしの場合

B部:一般部に断熱層を貫通する金属部材がある場合
C部:金属部材/ありはLGS下地などの断熱補強材の数値

  • LGSと断熱材が干渉しない場合・・・上図A部:一般部→金属部材 なし
  • LGS間に断熱材が施工されている場合
    • 断熱材部分・・・上図B部:一般部→金属部材 あり
    • LGS部分・・・上図C部:金属部材→金属部材 あり(LGS部の断熱補強箇所を指す)

この図を参照にそれぞれの箇所の断熱材の種類と厚さを入力してください。

RC造の両面断熱の断熱補強について

RC造では、内断熱、外断熱、両面断熱の3つの断熱工法の選択肢があります。

この内、両面断熱の断熱補強は、外側と内側の断熱材の熱抵抗値を比較することで、断熱補強の必要幅が変わるので注意が必要です。

両面断熱の断熱補強必要幅の算出条件
・熱抵抗値が、外側>内側の場合:外断熱の断熱補強必要幅による
・熱抵抗値が、外側≦内側の場合:内断熱の断熱補強必要幅による

本シミュレーターでは外側と内側の断熱材の熱抵抗値を比較して、それぞれの部位で必要な断熱補強の幅を自動的に判別、表示するように設計されています。

まとめ:関連記事

省エネ法への適合基準は、建物の断熱性能を決定づける非常に重要な部分であり、建設コストへの影響も大きい非常に重要な要素です。

省エネ計算書の作成を外注に頼る場合でも、省エネ法作成事業者は断熱設計そのものを行ってくれるわけではありません。
多くの事業者が、外注する前に断熱計画が適合状態であることを前提としているでしょうし、そうでない場合には設計業務に余計なコストとなって跳ね返ってきます。

このシミュレーションツールは、省エネ法に対する実務において、少しでも設計者の負担の軽減になる補助ツールとして利用されることを目的としています。

R値による判定だけでなく、より詳細なU値による判定も可能な完全版エクセルツール(※公開準備中)も用意しておりますので、ぜひご利用ください。

実務に役立つ「建築物省エネ法」詳細ガイドシリーズ(全体目次)

省エネ計算を自社で完結させたい意匠設計者のための実務マニュアル一覧です。ご自身の案件に合わせて必要なステップをご覧ください。

住宅に関する省エネ法仕様基準を示す告示266号を見やすくまとめた記事はこちらです。

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