前回の記事でレンジフードの必要排気量を求める方法として「理論廃ガス量により求める方法」と「フード開口面積から求める方法」を説明しました。今回の記事では、求めた必要排気量に対して圧力損失計算を行い実際に必要な換気扇の排気能力の選定方法を説明いたします。
以下の説明は住宅設計や店舗設計において意匠設計者が簡易的に設備設計(排気・換気)を行う場合の参考程度とお考えください。
ダクト式換気扇の圧力損失計算方法(簡略法)
ダクト式換気扇の選定の際には、必要排気量に対して、ダクトの長さや曲がり、ベントキャップなどによる圧力損失を考慮して、設置する換気扇の排気能力を高めに設定する必要があります。
計算方法としては「等圧法による計算」と「簡略法による計算」がありますが、私たち意匠設計者にとって理解しやすく、扱いやすい「簡略法による計算」方法を説明いたします。
※ 圧力損失計算(等圧法)についてはこちらの記事をご参照ください。
圧力損失計算(簡略法)による全体の流れは以下のようなイメージです。
- ダクト換気扇の必要排気量の計算(前回の記事)
↓- 換気扇から外部ベントキャップまでのダクト設計(長さ・曲がり・ダンパー・ベントキャップ)
↓- 各部材の直管相等長表を参考に換気扇から外部ベントキャップまでの「直管相当長」を求める
↓- 換気扇の「静圧ー風量特性曲線」に「直管相当長」曲線を記入し、交点を求める。
↓- 交点の風量を読み取り、必要排気量に10~20%の余裕を加味した風量が確保されていればOK。
圧力損失(簡略法)計算の例
それでは実際に計算してみます。
例として、図のようなダクトを想定します。
φ100mmの亜鉛メッキ鋼板製ダクトを使用し、90度曲がりが2カ所と外部フードが接続されています。
ダクト系の各部材の圧力損失を相当する直管の長さに換算したものが、ダクト系全体の「直管相当長」となります。
ここでは、90度曲がり2カ所と外部フードの「直管相当長」を調べ、現に配置されている直管の長さに加えたものがダクト系全体の「直管相当長」です。
まず90度の曲がりダクト(R/d=1.0)の直管相当長は、100φで「約2m」、150φで「約3m」となります。※1
(補足:45度の場合は90度の直管相当長の0.6倍)
この場合は100φの90度曲がりが2カ所ですので、2m×2カ所=4mとなります。
※1 パナソニックWebサイト内の資料による数値です。資料によっては数値が変わります。他の径の曲がりダクトについてはこちらの記事内の表を参照願います。
次に外部フードの直管相等長をカタログなどから調べます。使用するステンレスパイプフードFY-MFX043の直管相等長は7mとなっています。
最後に全てのダクト系の直管相等長を合計します。
直管:0.5m+0.5m+5m=6m
曲がり:4m
フード:7m
合計:17m
このダクト系の「直管相等長」は17mであることがわかりました。
※ 計算例はPanasonic Webサイトを参照しました
静圧ー風量特性曲線の見方
直管相等長が計算できましたら、換気扇のカタログなどから、静圧ー風量特性曲線図を参考に風量を満たす換気扇を選定します。
この図は静圧ー風量特性曲線図に直管相等長17mの線を点線で書き加えたものです。
この図を元に、この換気扇の静圧ー風量特性曲線と書き加えた直管相等長17mの線との交点”A”を求めます。
この交点Aから垂線を降ろした先の点”B”が、設計したダクト系でこの換気扇が発揮できる風量ということになります。(この表では130m2/h)
この数字が、必要排気量に10~20%の余裕を加えた数字を上回っていればOKです。
※ 計算例はPanasonic Webサイトを参照しました
「簡略法による計算」の説明は以上です。
繰り返しになりますが、説明内容は意匠設計者が簡易的に設備設計を行う際の参考程度とお考えください。より正確な計算や詳しい情報については設備設計者や専門書を参照願います。
「等圧法による計算」についてはこちらの記事をご参照ください。