中に石を詰め込むためのワイヤーメッシュボックスは、建築用建材として「ガビオン」という名称で定着しつつあるようです。
「ガビオン」はもともとは護岸工事や擁壁材として使用されてきた土木資材で「蛇籠」あるいは「ふとんかご」などと呼ばれているものです。
古くは竹などを用いた円筒形の土木資材で、歴史的には紀元前の中国で使用された例があり、日本には1000年以上前に伝えられたそうです。
土木で使用される蛇籠は、円筒形、角型、二重型などがありますが、大型で平たいものが多く、自重による摩擦抵抗により形状を安定させるため、建築用への転用にはあまり向いていないと言えるでしょう。
建築への転用で有名なのは、アメリカのカリフォルニア州にあるヘルツォーク&ド・ムーロン設計の「ドミナス・ワイナリー」かと思います。
わずかな透過性と、天然の空調効果を持つ石積みの壁面の圧倒的な重量感が印象的な建物です。
このガビオンですが、日本ではエクステリア建材として建築用の小型のものがいくつかのメーカーから販売されています。
国内メーカーから4社ほどピックアップして紹介したいと思います。
株式会社グラニテック
株式会社グラニテック様は博多市にある石材製品の設計・制作・販売・施工までを行う会社です。
ガビオンに関しては、「移動式カゴ石」と称して、現場で組み立てるのではなく、工場で石の充填を行い、完成品の状態で現場に搬入、設置を行う方式を採用しているそうです。
したがって、製品の安定的な品質の確保と素早い施工が可能で、大規模な工事に適していると言えるでしょう。
グラニテック様のWEBサイトには、ガビオンについての詳細な情報も掲載されていますので、ガビオンの採用を検討されている方は是非一度グラニテック様のWEBサイトを覗いてみてください。
上記のページでは、ガビオンの特徴、制作過程、施工事例などが掲載されています。
ガビオンの寸法規格・仕様
株式会社グラニテック様のガビオンマニュアルに記載されている寸法規格・仕様です。
株式会社グラニテック様のガビオンマニュアルに記載されている本体の仕様と参考耐用年数に関する資料です。
詳細については株式会社グラニテック様のガビオンマニュアルをご参照ください。
株式会社グラニテック様のガビオンのカタログやマニュアルはこちらです。
ヒガノ株式会社
ヒガノ株式会社様は、エクステリア製品やエントランス周りの製品を扱うメーカーです。
新製品としてガビオンがラインアップに加わっていましたので紹介いたします。
ヒガノ株式会社様のガビオンに関する製品は、建築エクステリアのメーカーらしい小型の製品や、フェンスがわりに使用できる背の高い製品など、様々な寸法の商品がラインナップされています。
ヒガノ株式会社様のWEBサイトにガビオンのカタログが掲載されていますので、その中より抜粋して紹介いたします。
ガビオン製品ラインナップ
ヒガノ株式会社様のガビオンには様々な用途の商品がありますが、その中からいくつかを抜粋して紹介いたします。
その他のガビオン製品に関しては、ヒガノ株式会社様のWEBサイト内にある、ガビオン製品一覧ページ、あるいはガビオンのカタログをご参照ください。
カタログはダウンロードして閲覧可能です。
ガビオンウォール
ガビオンウォールはフェンスとして利用できるような壁タイプの製品です。
奥行きは共通で150mmと小さめで、支柱となるフラットバーあるいはアングルを基礎に埋め込むことで転倒防止とするようです。
幅は2種類、高さは3種類がラインナップされています。
支柱の納まりなどは掲載されていませんので、詳細についてはヒガノ様へ直接お問い合わせください。
ガビオン ブラケット
ガビオンブラケットは置き型の小型の箱型ガビオンです。
連結金具を使用することで、上下2段まで積み重ねることができます(メーカー推奨)。
ガビオン充填用マテリアルストーン
ヒガノ株式会社様では、ガビオンに充填する石も合わせて販売されています。
ガビオンのデザインは充填する石のカラー、質感、並べ方などに大きく左右されますので慎重に検討を重ねる必要があります。
株式会社 三樂(さんらく)
株式会社三樂様は東京都江東区にあるエクステリア・ガーデン資材販売メーカーです。
石材を中心に、エクステリア用の木材、オーダーメイドの金属製品や古レンガなども扱ってらっしゃいます。
ガビオン製品も、ボックスタイプ、門袖タイプ、ツリーサークルタイプなどのラインナップがあり、発展型として緑化用のグリーンウォールやプランターなどもあるようです。
いくつかの商品をピックアップして紹介いたします。
ガビオン製品 ラインナップ
ストーンボックス
ボックスタイプのガビオンです。
2種類のサイズがあり、H450タイプは横連結、縦連結が可能です。
設置型ですので、基本的には自重で安定させるタイプですが、状況に応じて転倒防止用の補強を考慮する必要があります。
転倒防止策としては、後に紹介する門柱タイプの製品の転倒防止策が参考になります。
- ストーンボックス 寸法規格
-
・W900 × D300 × H450 (横連結・縦連結(2段まで)可能)
・W450 × D450 × H600
- ストーンボックス 本体仕様
-
亜鉛・アルミ合金メッキ鉄線φ5mm @75mm
セット内容:本体側面パネル2枚、底パネル1枚、フタ2枚、接続金具10個、幅留め筋
ガビオン 門袖
門袖タイプのガビオンです。
サイズは2種類がラインアップされています。
1.8m程の高さに対して奥行きが300しかないため、転倒防止策は必須となります。
転倒防止策としては、本体下部の地中埋め込みや、支柱となるパイプを内蔵させる、あるいはそれらの併用などの方法があるようです。
株式会社三樂様のWEBサイトに転倒防止内容を含む施工要領書が掲載されていますので、そちらをご参照ください。
- ガビオン 門袖ユニット 寸法規格
-
・W450 × D300 × H1800 (転倒防止策必須)
・W1200 × D300 × H1725 (転倒防止策必須)
- ストーンボックス 本体仕様
-
亜鉛・アルミ合金メッキ鉄線φ5mm @75mm
セット内容:本体(前面)パネル1枚、本体(背面)パネル2枚、フタ2枚
ガビオン 植栽桝(ツリーサークルタイプ)、角柱、円柱
植栽枡、角柱、円柱タイプのガビオンです。
サイズはそれぞれ1種類がラインアップされています。
アイデア次第で様々な使い方がありそうな商品です。
- ガビオン 植栽枡 寸法規格
-
・φ1200(外径)φ800(内径) × H450 (3分割組み立て)
・仕様:亜鉛・アルミ合金メッキ鉄線φ5mm @75mm
・セット内容:外パネル3枚、内パネル3枚、ダークグリーン不織布、補強線9本、接続金具18セット - ガビオン 角柱 寸法規格
-
・□300 × H450
・仕様:亜鉛・アルミ合金メッキ鉄線φ4mm @75mm
・セット内容:本体パネル、上面パネル - ガビオン 円柱 寸法規格
-
・□300 × H450
・仕様:亜鉛・アルミ合金メッキ鉄線φ4mm @75mm
・セット内容:本体パネル、上面パネル
株式会社日唐石工
株式会社日唐石工様は、石材、景観資材、エクステリア資材などの販売や造園事業などを行われている会社です。
「ガビオーネ」という名前で小型のガビオンを製造されていて、関連サイトのオンラインショップや楽天などのいろいろなネットショップなどで購入可能です。
4種類のサイズがあり、組み立て式です。
オンラインショップには組み立てマニュアルなども掲載されていますので、DIYも可能ですが、重量物であるため転倒防止には十分留意する必要があります。
現在のところ(2024年4月)、株式会社日唐石工様のWEBサイトやカタログには商品の掲載はないようです。
ガビオーネ サイズラインナップ・仕様
ガビオーネ 組み立て方法
ガビオーネ 販売店紹介
ガビオンのメリット・デメリット DIY時の注意点
特別な技術を持たずとも、自然石を用いて自由なデザインの石組みのエクステリアオブジェを比較的簡単に作ることができるのがガビオンの魅力ですが、建築への転用の歴史が短く実績が少ないため、主に安全面でまだまだ課題の多い建材かもしれません。
しかしながら、デザインの面白さから人気が高く、一般の方でもDIYで作ろうと思えば作れてしまうためネットショップなどで様々な店舗で販売されているようです。
ここではガビオンのメリットとデメリットについて、主にDIYの観点から触れてみたいと思います。
ガビオン DIYのメリット
- デザインの自由度
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ガビオンのデザインは、中に充填する石の色合いや質感、並べ方などで決まります。
充填する建材も石材に限定する必要もありませんので、アイデア次第でオリジナルのエクステリアオブジェを作り出すことが可能でしょう。テーブルの脚の代用として、またはベンチとして利用するなど、ガビオンの重量を利用したいろいろな構造物への転用が考えられますし、ベンチなどはメーカーにより製品化されていたりもします。 - 環境に優しい建材
-
鉄と石を使った建材ですので、解体後もリサイクルが可能です。
解体も人力でできますし、重機があって小型のガビオンであればそのまま移動することも可能でしょう。 - DIYの手軽さ
-
重労働にはなりますが特別な技術は必要なく、現場で試行錯誤をしながら組み上げていく楽しさはDIYに向いた建材であると言えます。石材搬入の問題さえ解決できれば、組み上げそのものは難しくありませんので、怪我には注意してじっくりとDIYを楽しむことができるかと思います。
ガビオン DIYのデメリット
- 転倒の危険
-
ガビオンは小型のものでも数百キロになるような重量物です。
特に高さが1mを超えるようなものの転倒時の危険性は、ブロック塀などとは比較にならないくらい危険であると言えます。
これはあくまでも目安の話(メーカー基準)ですが、ガビオンの高さが幅の2倍を超えるような不安定な形状の場合は、なんらかの転倒防止策は必須であると考えましょう。
建築用のガビオンは転倒防止策として確立された技術も定められていないようなものですので、危険性を伴う形状のガビオン設置に関しては、メーカーの技術者や専門家の技術指導のもとに、責任ある立場で工事を行うことができる施工者に任せる方が無難であると考えます。 - 耐久性について
-
ガビオンの耐久性は石材を包む溶融亜鉛メッキ鉄線の耐久性にかかっていると言えます。
耐久性は100年を超えるなどと言われていますが、設置する場所の環境によって変化しますし、鉄線のメッキが工事の際の傷などによって剥げてしまいますと、メッキ内部の鉄の腐食がはじまり耐久性は大きく減少することになります。
グラニテック様のガビオンマニュアルには、ガビオンの亜鉛メッキと鉄線の耐久性についての考察が掲載されていますので、資料としてご参照ください。
フェンス型ガビオンの転倒防止策について
先に述べたように、ガビオンの建築転用を考える際、フェンスタイプなど、高さに対して幅または奥行きの小さなガビオンを設置する場合の転倒防止策は必須です。
転倒防止策としてこれといった技術的なものは確立されていないようですが、メーカーによりいくつかの対策が示されていますので紹介いたしますが、フェンスタイプのDIYはやめておくべきだと考えます。
きちんとした設計者と施工技術を持つ専門の施工者に依頼しましょう。
- ガビオン本体は、ガビオンの重量と地盤の状況に応じて適切に構築された水平なコンクリート基礎上に設置する
- 十分な値入れ深さを確保して本体下部を地中に埋設する
- 基礎にしっかりと緊結された支柱を本体内部に内蔵する
転倒防止策として①は必須、状況に応じて②か③、あるいはその両方を盛り込む必要があると思います。
メーカーの転倒防止策としては①と③の組み合わせが主流であるようですが、③に関しては、鉄筋などではなく、メッキ処理されたアングルやパイプの下部をコンクリートの基礎にしっかりと埋設させることが重要です。
②に関しては、本体の転倒対策として形状的には安定しますが、地盤面下にある鉄線が湿潤環境となるため、耐久性が落ちると思われます。
デザイン的な部分も考慮して、個人的には①と③で転倒防止策は完結させたいと思うところです。
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