電力の低圧引込みの条件に関しての設計メモです。
小規模な商業施設や複合施設の計画において、イニシャルコストを下げたい、あるいはキュービクルを設置する場所の確保が難しいといったような場合に、低圧引込みを検討することがあります。
一般的には、ひとつの建物に対して電力の引込みは1系統というのが基本的な考え方で、建物全体の電力の契約容量が50kVA未満が低圧引込み、50kVA以上になると高圧引込みとなります。
ただし、ある条件を満たすと建物全体の契約容量が50kVAを超える場合にも低圧引込みとすることが出来る場合がありますので、その条件についてまとめました。
・一つの建物に対して1系統の引き込みが基本
・建物全体で契約容量が50kVA未満の場合は低圧引き込みが可能
・建物全体で契約容量が50kVA以上の場合は高圧引き込みとなる
・ある条件を満たせば、建物全体の契約容量が50kVAを超える場合にも低圧引込みとすることが出来る
※ 以下の記事は意匠設計者が電気設備の基本的な計画を行う場合の設計メモです。
詳細な条件については電力会社や電気設備設計者などの専門家にお問い合わせください。
※ 東京電力の担当者との協議をもとに記事を書きました(2015年)。
他の地域、他の電力会社の条件については個別にお問い合わせをお願いします。
電力の契約容量50kVA以上で低圧引込みとするための条件
まずは基本的な条件をもう一度おさらいします。
電力引込みの基本的な条件
- 一般的には1つの建物に対して1系統の引込みが基本
- 電力の契約容量が50kVA未満が低圧引込み、50kVA以上が高圧引込みとなる
小規模な建物でも商業施設や複合施設であれば契約容量の合計は50kVAをすぐに超えてしまいます。
したがって❷の条件により、建物全体で高圧引込みを行い、設置したキュービクルによって低圧電源に変換したものを各区画に分配するというのが通常の設計になります。
一方、❶の条件には例外があり、ある要件を満たすことによって各区画への引込みを個別に行うことができます。
そして、各区画の契約容量がそれぞれ50kVA未満であれば、すべての区画を低圧での引き込みとすることができます。
これを「低圧弾力供給」といいます。
低圧弾力供給とは?
「低圧弾力供給」とは、後に詳しく説明する条件を満たすことで、一つの建物に対して複数系統に分けて電力を引込み、その各系統の契約容量を50kVA未満とすることで、建物全体を低圧引込みとするような引込み方式のことです。
各電力会社の担当者と事前協議を行い、「低圧弾力供給協議事前確認票」を提出することで、電力会社が供給可否判断を下します。
電力会社との低圧弾力供給協議により、条件を満たせば低圧電力の複数系統での引込みを申し込むことが可能
低圧弾力供給協議の際に提出する書類はこちらです。
こちらは、「低圧弾力供給協議事前確認票」のサンプルです。(低画質なもので申し訳ありません)
この資料に図面などを添付して事前協議を申し込みます。
低圧弾力供給協議で行われる判断は、あくまでも事前協議としての位置づけであり、最終的には電気使用申込時による判断が正式なものとなりますのでご注意ください。
詳細は各電力会社の窓口までお問い合わせください。
低圧弾力供給の詳細な条件
それでは、どのような条件を満たすと「低圧弾力供給」が可能となるのでしょうか。
低圧弾力供給の条件をまとめました。
- 共同住宅の各住居へは個別に引込みが可能
- 共有部分を介してアクセスする事業所はまとめて1系統の引込みとする
- 路面店(共有部分を介さず道路より直接アクセスできる事業所)は個別に引込みが可能
- 共用部の電力は専用で1系統として引込みが可能
- 各系統毎の合計契約電力容量が50kVA以下であれば低圧での申し込みが可能
- その他、敷地周辺の設備状況により判断
解説
- マンション等の共同住宅は各住戸毎に個別引込みが可能です。
複合施設においても、住宅が含まれる場合は、住戸毎に個別引込みが可能です。 - 共用部分とはEVや階段、共用廊下等を指します。
外部から事業所へアクセスする場合に共用部分を通るような計画の場合は個別での引込みができませんので、まとめて1系統の引込みとする必要があります。
その合計の契約電力容量が50kVA未満である場合には低圧での申し込みが可能です。 - ❷とは逆に、共用部分を通ってアクセスする必要のない路面店などは、個別で引込みが可能です。
2階や地下にある店舗であっても、各店舗専用の階段でアクセスする場合は個別引込みが可能となります。 - 共用部の電力は他の区画とは別に専用で1系統として個別に引込むことが可能です。
- ❶〜❹の条件により、建物全体の契約容量が50kVA以上でも、それぞれの系統毎に50kVA未満であれば、ずべての系統を低圧で申し込むことが可能です。
- 1〜5以外にも、敷地周辺の設備状況による条件があり(トランスの位置など)、最終的には電力会社が可否の判断を行います。
低圧弾力供給の例を図解
言葉では理解しにくいので、低圧弾力供給の例を断面図にしてみました。
共同住宅と店舗の複合施設の例です。
断面で表すとわかりやすいかと思います。
この場合、建物全体の契約電力容量の合計は180kVAですが、8系統に分けてそれぞれの系統毎に低圧引込みとする計画です。
(共用部のエレベーターは動力ですが、個別に引込みとしています。)
最終的な判断は各電力会社が行います。
ここでの説明はあくまでも参考程度としてお考えくださいますようお願い申し上げます。
詳細については各電力会社の窓口にお問い合わせください。
補足・リンク
低圧弾力供給協議事前確認票の見本は手元にある低画質なものです(申し訳ありません)。
正式なものは各事業所の窓口でもらえます。
提出自体はFAXでも受付てもらえるようです。
私の場合は、付近見取図、配置図、平面図、断面図、簡単な電力引込み計画図と電力計画図(各テナント・住戸の電気容量を示したもの)を添付して提出しました。
低圧弾力供給協議事前確認票の記入方法がわからない部分は空欄のままとしましたが、最寄りの電柱番号は現地で調査しました。
低圧弾力供給の可否の結果は、電力会社より後ほど電話で知らせてもらえます。
この確認票の結果は事前協議としての位置づけとなり、最終的な判断はあくまでも正式な電気使用申込を提出した後となりますのでご注意ください。