ダクトレス熱交換換気扇の商品とその仕組みを紹介いたします。
通常の熱交換換気システムは、排気あるいは給気位置から離れた場所にある熱交換器を経由させるために、排気ダクト・給気ダクトを天井内などに配管しなければいけません。
換気効率を上げるために給気場所と排気場所は出来るだけ離れた場所に設置するのが通常ですから、ダクトの設置距離は長くなり、それがコストに跳ね返ってきます。
今回紹介する熱交換換気システムは、通常のパイプファンのように外壁面に設置するタイプでダクトの配管の必要がありません。
いったいどのような仕組みになっているのでしょうか。
ダクトレス全熱交換換気システム 「せせらぎ®︎」
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」は、断熱材や気密化部材、外付けブラインドなど、住宅の温熱環境に関する様々な建材を扱うメーカー「パッシブエネルギージャパン株式会社」の商品です。
ダクトレス熱交換換気システム「せせらぎ®️」本体の写真を見ますと、パイプファンに近い形状に熱交換機能を有する蓄熱エレメントと呼ばれる部材が内蔵されているのがわかります。
この蓄熱エレメントにファンユニットやフィルターがセットされており、室内側グリルや外部フードなどが一体となっている非常にシンプルな構成です。
しかしこれだけではセラミック蓄熱エレメントで回収した熱エネルギーを外部から取入れた空気に伝えることが出来ないように思えます。
ダクトレス熱交換換気システム「せせらぎ®️」は、非常に単純な発想でこの基本構成部材のみで熱交換率93%を実現しています。
シンプルな構成部材で熱交換率93%を達成する驚きの発想
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」の熱交換の仕組み
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」は2台一組で使用する第1種機械換気を採用しています。
部屋の一方に機械式給気ファン、もう一方に機械式排気ファンを設置し、それぞれに蓄熱エレメントが内蔵されています。
そして、70秒ごとに給気と排気が入れ替わるという非常に単純明快な発想で熱交換機能を実現しています。
熱交換と同時に湿度も調整
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」の蓄熱エレメントは熱交換を行うだけではなく、室内の湿気の回収(冬場)、あるいは屋外からの給気の除湿(夏場)の機能をも併せ持ちます。
これは内蔵されている蓄熱エレメントが蓄熱の効果だけではなく湿気を貯めておく効果を同時に保有しているためで、70秒ごとの排気⇄給気の反転運転で、熱と湿気の、回収と放出を同時に行うことができるからです。
その湿度回収率は80以上となっているようです。
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」にはこの湿度調整に特化した機種が用意されています。
詳しくは次の項目で説明いたします。
機能の違いにより3種類のラインナップ
排気 ⇄ 給気 入れ替えの制御は専用のコントローラーで行います。
3種類のコントローラーがありそれぞれ異なる機能を有します。
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」の機種による機能の違いは、このコントローラーによる制御方法の違いだと考えて問題ないかと思います。
よって、それぞれのコントローラーの機能を順に説明していきたいと思います。
スタンダードタイプ 「VMPX-N」
VMPX-Nコントローラーは、70秒ごとの反転運転で熱交換換気と湿度調整を行うスタンダードタイプです。
手動で4段階の風量調整を行うことができ、熱交換運転モードと熱交換を行わないナイトパージモードの2種類の運転モードがあります。
ナイトパージモードは、夏場の夜間など温度と湿度が外気の方が低い場合に反転運転を行わず一方通行で外気の新鮮な空気を取り入れ続ける運転モードです。
フィルター交換のお知らせ機能と、1台のコントローラーで2〜8台のファンを制御できるのは全機種共通の仕様です。
湿度制御機能付きコントローラー「VMPX-NH」
VMPX-NHコントローラーの最大の特徴は湿度調整機能があるということです。
湿度センサーにより、通常は70秒ごとに行われるファンの反転時間を15秒~140秒の間隔で調整し、室内の湿度を制御することができます。
手動による4段階の風量調整、熱交換を行わないナイトパージモードを備えるのはスタンダードタイプのVMPX-Nコントローラーと同じです。
湿度の高い空気が「せせらぎ®」の蓄熱素子を通ると、 空気に含んだ湿気は蓄熱素子の表面に吸着されます。
反転の直後は湿気の吸着力が高いですが、 しばらく時間がたつと湿気の吸着能力が軽減します。
その特性を利用して反転時間の変更により住宅内の湿度を調整することが出来ます。
湿度センサーにより反転時間を15秒~140秒の間隔で調整し室内の湿度を制御します。
VMPX-NHコントローラーカタログより抜粋
フィルター交換のお知らせ機能と、1台のコントローラーで2〜8台のファンを制御できるのは全機種共通の仕様です。
CO₂制御機能付きコントローラー「VMPX-AQ」
VMPX-AQコントローラーの最大の特徴は、室内のCO₂濃度を自動測定して換気風量を自動制御する機能を有するということです。
室内のCO₂濃度の状況を色で確認することができるモニターを備えていて、CO₂濃度が高くなると自動で換気風量を増やしてくれます。(最大80㎥/h)
ウィルスを除去する専用のフィルターを備えていて、このフィルターと合わせて「せせらぎAQ」という換気システムの名称が与えられています。
手動による4段階の風量調整、熱交換を行わないナイトパージモード、フィルター交換のお知らせ機能、1台のコントローラーで2〜8台のファンを制御できるのは、他のコントローラーと同じ仕様です。
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」機種ラインナップまとめ
機種名 | コントローラー | 機能 | 運転モード | 風量制御方法 |
せせらぎ®️ | VMPX-N | 熱交換・湿度調整機能 | 熱交換モード、ナイトパージモード | 手動4段調整 |
VMPX-NH | 熱交換・反転時間制御による自動湿度調整機能 | 熱交換モード(自動湿度調整)、ナイトパージモード | 手動4段調整 | |
せせらぎ®︎AQ | VMPX-AQ | 熱交換・湿度調整機能、CO₂濃度自動測定による風量調整機能 | 熱交換モード、ナイトパージモード | 自動風量調整、手動4段調整 |
※せせらぎ®︎AQは専用のウィルスフィルター付き
「せせらぎ®︎」の寸法図はこちら
ダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」のその他の特徴
一般の換気扇・セントラル熱交換方式と比較したメリット(節電効果)
ダクトレス熱交換換気システムの熱エレルギー回収による節電効果が「せせらぎ」のウェブサイトに記載されています。
一般換気扇と比べ、ひと冬の暖房費が約68%も節約できるそうです。
さらに年間の省エネ効果は暖房費換算で北海道旭川市の場合約20%、東京都の場合50%にもなるとのことでした。
セントラル式の熱交換換気システムに対しても初期費用の面で大きくメリットがありますので、まさに良いとこどりのような換気システムだと思います。
他にもいろいろとメリットが説明されていますので、パッシブエネルギージャパン様のウェブサイトで確認してみてください。
ダクトレス熱交換換気システムのメリットについて
設計上の換気風量について
PEJスーパー換気「せせらぎ」は、70秒ごと(VMPX-NHは15〜140秒ごと)に給気と排気を切り替えるシステムですので、部屋の空気全体に揺らぎを与えるような、窓を開け放った時の自然換気に近いイメージです。
したがって、トイレや脱衣室、火気使用場所などに設置する局所換気には向かないシステムだと考えます。
それらの部屋に設置する局所換気とは別に住居内全体の換気システムとして採用するのが適していると思われます。
また、手動による風量調整や自動風量調整機能を備えた機種がある以上、24時間換気の設計風量に含めるのも無理があるのではないかと個人的には考えます。
一応、メーカーのウェブサイトに換気風量の考え方が記載されていますので、そちらを参考にして検討してみてください。
パッシブエレルギージャパン様ウェブサイトに掲載されている計算根拠はこちらです
メーカーサイト案内|カタログ請求・お問い合わせ先
現在メーカーサイトにダクトレス熱交換換気システム 「せせらぎ®️」の価格に関する情報は掲載されていません。
価格に関しては見積もり対応になるようです。
パッシブエレルギージャパン様 ダクトレス熱交換型換気システム「せせらぎ®」のウェブサイトはこちら