ビルトインAVラックを格安で作る方法

壁埋込みAVラック

住宅や店舗の設計において、ホームシアターやサラウンドシステムを導入する場合、部屋の中をすっきりと仕上げるために、AV機器やゲーム機などの映像・音響機器などを収納するAVラックを壁の中にビルトインさせることが多々あります。
通常は収納する機器に合わせてデザインした家具を特注する訳ですが、予算の厳しい場合にはすこしでもコストを抑えるために既製家具を応用することがあります。今回はそのような場合に最適なシステム家具を紹介いたします。

目次

ビルトインAVラックの条件

ビルトインAVラックを一からデザインする場合の設計条件を考えてみましょう。
私が設計した住宅を例として説明してみます。
中に収納する機器はテレビに接続するものがメインとなります。
今回は、CATVのチューナー、ブルーレイディスクレコーダー、オーディオアンプがメインで、それ以外にNTTの光回線の分配機、インターネットのワイヤレスルーター、Ethernet用のハブなどです。
このうちCATVチューナーとブルーレイディスクレコーダーとオーディオアンプはリモコンで操作するので、収納場所に赤外線が届くように収納扉はガラスでなければなりません。
家具の大きさは、収納する機器類とブルーレイディスクや各機器の説明書類、その他小物などの量を考慮して、およそ幅60cm×高さ100cmもあれば十分でしょう。
さらに重要なポイントは、各機器同士の配線の接続と配線のやり替えなどのメンテナンスを機器の裏側から直接できるようにAVラックの背面にも扉をつけるということです。これができないと、配線をやりかえる度に機器をラックから引き出して行わなければならず、非常に面倒です。

以上の3点が条件ですが、これらの条件を満たす既製家具をIKEAの商品で作り出すことができます。

BESTÅ(ベストー)|IKEA

ベストーAVラック


IKEA BESTÅ(コンビネーション家具システム)

このBESTÅ(ベストー)という商品は、ラック本体、扉、引出し、パネル、脚などを組み合せて自由な色や大きさのラックやキャビネットをデザインできるシステム家具です。非常に優れたシステムなのですが、少し難しいのでそのシステムを理解できるまでにそれなりの時間を要しました。
そのシステムを説明しだすとそれだけで一つ記事が書けてしまうとおもいますので、それはまたの機会にして、今回はビルトインAVラックの作り方のみを解説いたします。

IKEA BESTÅを利用したビルトインAVラックの組合せ例

まずラック本体のフレームを選びます。
色はバーチ調、ダークブラウン、ホワイトと3色ありますので好みの色を選びます。
大きさは様々なものがありますが、条件にもっとも近い幅60cm、奥行40cm、高さ128cmのものを選びました。

BESTA シェルフユニット 60x40x128


BESTÅ シェルフユニット (ホワイト、60x40x128 cm)¥9,257

次にAV機器を収納する場所の前面に取付けるガラス扉を選びます。
ラック本体の上部半分をガラス扉で開閉できる部分とします。

BESTÅ GLASSVIK ブラック クリアガラス

BESTÅ GLASSVIK ガラス扉(ブラック/クリアガラス、60×64 cm)¥ 4,114
※私の場合は、現在は発売されていないアルミフレーム枠のクリアガラス扉を使用しています

ラックの下半部には引出しをセットし、ブルーレーディスクや説明書、その他の小物類を収納できるようにします。引出しの扉は2色を交互にセットし、ストライプ柄としてみました。

BESTÅ TOFTA ハイグロスブラック

BESTÅ TOFTA 引出しパネル+引出し本体(ハイグロスブラック、60×16 cm)計¥ 2,572 ×2セット

BESTÅ TOFTA ハイグロスホワイト

BESTÅ TOFTA 引出しパネル+引出し本体(ハイグロスホワイト、60×16 cm)計¥ 2,572 ×2セット
※写真はホワイトの 60×26 cmのタイプです

最後にラック背面に取付けるメンテナンス用の扉とパネルを選びます。
シンプルで価格がもっとも安い白い扉を2枚用意し、1枚を通常の扉、1枚を引き出し部分の背面の固定パネルに利用します。

ホワイト扉60×64cm


BESTÅ VARA 扉(ホワイト、60×64 cm)計¥ 1,543 ×2セット
※私の場合は、現在は発売されていないハイグロスホワイト扉を使用しています

以上の商品で合計¥ 26,745(2014年5月現在の価格)となります。
※ 追記:ガラス扉と引出しに取手が必要です。(BLANKETT取っ手(2ピース入り) ¥ 206 ×3 セット)

選んだAVラックの設計への組み入れ方

設計に携わる方へは説明不要な内容ではありますが、一応組み立てと設計へ組み入れるポイントを説明いたします。
AVラックは前後両面から使用されるため、設置場所と部屋の間取りを考慮しなければなりません。
私の場合はリビングルームとシューズクロゼットの間の壁に設置し、AVラック本体を支給品扱いとし設計図内に記載しました。

AVラック平面

ラック本体のフレームを組み立てる際には、付属の背面パネルは不要となりますので、組み入れません。
また、フレームの側板に、内部に収納する機器への電源供給と、映像・音声コードを接続するためのコンセント設置用の開口部を設ける必要があります。本体は壁に埋込むため穴を開けることによる強度的な心配はないでしょう。
電源コンセントやAVコンセントを内側に向けて設置するとスマートです。(電気設備図に付帯する電気設備工事の内容を記載しておきます)

実際にAVラックを設置する際、建築工事や電気設備工事とのからみが発生するのはフレーム本体のみですので、扉や引出しは通常のIKEAの家具と同様に、竣工後にオーナー様に取付けていただいてもよいかと思います。
扉の取付は内部棚板用のダボ穴にビス止めとなりますので、背面のメンテナンス扉もフレーム本体の背面パネルを取り外すだけで普通に取付け可能です。(私の場合、下側の固定パネルは別途用意したL型金物を使用して取付けました)

完成写真

AVラック埋込写真正面

ビルトインAVラック リビング側正面

AVラック埋込写真裏面

ビルトインAVラック シューズクロゼット側背面

AVラック埋込写真裏面2

ビルトインAVラック シューズクロゼット側背面(メンテナンス扉を開けた様子)

IKEAの商品は安い替わりに耐久性に問題があると思いますが、フレーム本体にさえ問題がなければ、扉、引出し類は取替えができるので大きな問題にはならないと考えます。

IKEA BESTÅシリーズ 商品一覧(IKEA ウェブサイト)

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