フードの設計メモ|熱量・フード断面積から必要排気量を計算する方法

今回の記事は火気使用場所のレンジフードの排気量計算に関する設計メモです。
店舗設計における厨房機器や、住宅のキッチンの加熱機器の熱量に基づく必要排気量の計算方法と、フード断面積から必要換気量を求める方法をまとめました。
以下の説明は住宅設計や店舗設計において意匠設計者が簡易的に設備設計(排気)を行う場合の参考程度とお考えください。

必要排気量の計算方法

火気使用室の必要排気量の計算は、建築基準法により「理論廃ガス量により求める方法」が定められています。さらに、フードの開口部分の実質的に必要な風速から求める「フード断面積から求める方法」を併用するのが望ましいと考えます。

理論廃ガス量により求める方法

設置する熱源の発熱量から必要排気量を求める計算式は以下の通りです。
補足:建築基準法上の必要排気量計算式

V=NKQ

V: 必要排気量(m3/h)
N: 定数(レンジフードの形状・寸法により定められた数値)
K: 理論廃ガス量(m3/kW ・ h)または理論廃ガス量(m3/kg)
Q: 発熱量(kW)または燃料消費量(kg/h)(m3/h)

※ K=0.93m3/kW・h

ここで、理論排ガス量”K”は、0.93m3/kW・hと固定の数値になっています。
定数”N”はレンジフードの形状によって定められる数値で、断面形状と開口部寸法によって、N=20、N=30、N=40と変化いたします。定数”N”に対するフードの条件は以下の通りです。

  • 排気フードⅠ型
    Ⅰ型
    N=30
    H < 1000mm


  • 排気フードⅡ型
    Ⅱ型
    N=20
    H < 1000mm 熱源を覆う水平距離 < H/2 フードの傾斜角 θ > 10°


  • 排気フードⅠ形と同等とみなせるフード
    Ⅰ型同等
    N=30
    1000mm < H < 1200mm 熱源を覆う水平距離 < H/6


  • 排気フードがない場合(換気扇など)

    N=40

 

フード開口面積から必要排気量を求める計算式

一方、フードの開口面積と開口部分の風速より必要排気量を求める計算式は以下の通りです。
補足:フード開口部の風速を適切に保つ為の計算式(建築基準法上は求められていない)

V=AS×3600

V:必要排気量(m3/h)
A:フード開口面積(m2) A=W(フード開口幅)×D(フード開口奥行)
S:開口部の風速 0.35~0.5 m/s

 

計算例

必要排気量の計算例を挙げてみます。
以下のような3口ガスコンロとⅠ型フードを設置する条件で計算してみます。
(同じ部屋の近い場所にガス炊飯器も設置しているという前提です。)
 

フード必要排気量計算例■ 1 理論廃ガス量により求める方法

3口コンロ:V(必要排気量|m3/h)=NKQ
N=30
K=0.93m3/kW・h
Q=9.3kW

V=30×0.93×9.3=259.47(m3/h)

ガス炊飯器:V(必要排気量|m3/h)=NKQ
N=40
K=0.93m3/kW・h
Q=2.6kW

V=40×0.93×2.6=96.72(m3/h)

全体 V(総必要排気量|m3/h)= 259.47 + 96.72 = 356.19 (m3/h)・・・A

■ 2 フード開口面積から必要排気量を求める方法

V(必要排気量|m3/h)=AS×3600
A=1.2m×0.65m=0.78m2
S=0.35m/s

V=0.78×0.35×3600=982.8(m3/h)・・・B

以上のような結果となりました。
AとBと比べてみますと、理論排ガス量による計算より、フード開口部の風速による計算の方が大きな数値となってしまい、その数値の差がかなり大きいことが分かります。
これが何を意味するかといいますと、理論排ガス量により換気量を求めても開口部に最低限必要な風速の1/3程度にしか至らなかったということです。

補足1:言い換えると、建築基準法上の必要換気量を満たしていても、フード開口部に適切な風速を確保できないということです。
補足2:一般的にフード開口部の風速が0.3m/sを下回るようですと、人の動きで起きる風などでフードへの空気の流れが乱されてしまい、効率よく換気ができないということです。

この計算結果に従って、Bのフード開口部の風速によって計算した数値を満たす能力を持つ換気扇を採用しますと、かなり大型の換気扇を設置する必要が出てきます。そこで、必要以上に大出力の換気扇を設置する必要がないようにするための対応策は、フードの「火源を覆い、排ガスを一様に捕集できる形状」を変えることなくフード開口部の面積を減らすことが必要であると考えられます。
 

整流板を設置して再計算

以上のような問題を解決するために整流板を設置することにします。
フード開口部に1050mm×500mmの整流板を設置し、フードの形状を変えることなくフード開口部面積を減少させることにします。その他の条件は変わらないまま再計算してみます。

整流板設置例
フード開口面積から必要排気量を求める方法(整流板設置)

V(必要排気量|m3/h)=AS×3600
A=(1.2m×0.65m)-(1.05m×0.5m)=0.255m2
S=0.35m/s

V=0.35×0.255×3600=321.3(m3/h)

以上のような計算結果になりAの理論廃ガス量により求めた必要排気量を下回る結果となりました。
すなわち、整流板を設置すると、理論廃ガス量により求める方法によるAの計算結果に基づいて換気扇を設置しても、フード開口部に十分な風速を得られるということになります。
実際にどのくらいの風速が出ているのかを計算してみます。

V(必要排気量|m3/h)=AS×3600より
求める風速 S=V/(3600×A)
S=356.19/(3600×0.255)=0.388(m/s)

という計算結果になりました。
 

まとめ

フードの設計を行う際は以下のような手順になります。
まず各加熱機器の発熱量※を調べ、理論廃ガス量によりV=NKQ式を用いて必要排気量を求める。
補足:建築基準法上必要な計算はここまででOKです。
次に、V=AS×3600式を用いて、フード開口部に最低限必要な風速0.35m/sを確保するために必要なフード開口部面積を割り出す。
開口部面積の調整の際には「火源を覆い、排ガスを一様に捕集できる形状」を保てるようにフード全体の大きさを確保しつつ、整流板により開口部面積を小さくすることで風速を調整する。
このような流れでよいかと思います。

※参考 1kW = 859.85kcal/h (単位換算についてはこちらの記事を参照してください)

以上の手順でフードの形状と必要排気量を決定することができましたが、必要排気量=排気ファンの風量という訳ではありません。必要排気量を確保するためには静圧を考慮して排気ファンの能力を決定する必要がありますので、次回の記事(ダクト式換気扇の圧力損失計算(簡略法)と静圧ー風量特性曲線の見方)で説明したいと思います。

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コメント

    • yyy
    • 2015年 5月 27日

    2 フード開口面積から必要排気量を求める方法
    も検討して計算したところフードが大きくなればなるだけ換気容量が増えるのが今一理解出来ません。
    それならフードなしでV=40KQでいいのでは無いのかなと。
    民間の確認検査機構に聞いてもAS3600を使う場合は煙突式の換気の場合では無いでしょうかと。
    詳しく分かってないものでスッキリしたいものです。

    • Taki
    • 2015年 5月 31日

    コメントありがとうございます!
    フード開口面積から必要排気量を求める計算式「V=AS×3600」は、法規的に求められる計算式ではありません。基準法上では「V=NKQ」の計算式を使用した換気容量の計算だけで問題ありません。誤解を招くような説明の仕方で申し訳ありませんでした。

    おっしゃる通り、「V=AS×3600」計算式では、フードを大きくすればするほど必要な換気容量が増えてしまうという矛盾があります。
    言い換えますと、一定の換気容量でフード開口面積を大きくすると、フード開口部の風速が落ちてしまうということです。

    一般的にフード開口部の風速が0.3m/sを下回るようですと、人の動きで起きる風などでフードへの空気の流れが乱されてしまい、効率よく換気ができないと言われているようです。
    よって、フードを設計する際には、熱源からの熱気や煙をできるだけ効率よく集めるために「フードを大きくする必要がある」一方、十分なフード開口部の風速を確保するために、整流板などを設置して「開口部面積そのものは小さくする」という点に留意するべきというのが私の理解です。

    住宅用などの一般的なフード型換気扇はこの点が考慮されていて、あらかじめ整流板が取付けられている商品が多いと思いますが、店舗の厨房などでフードを設計する際には、「V=NKQ」で求めた換気容量に対して、フード開口部の風速が小さくなりすぎていないかを「V=AS×3600」計算式でチェックを行い、必要に応じて整流板などで風速を調整するのがよいかと思います。

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